相続税に関して、「相続財産の課税価格が基礎控除額を超える場合」に申告および納税の義務が生じます。基礎控除額は相続人各人の納税額とは別に、税額算定の初期段階において考慮されるもので、常に適用されるものです。そのため相続に関わる方全員が理解しておくことが望ましいです。以下でその金額の計算方法、相続人の構成など具体的なパターンに応じた控除額も紹介していきます。
目次
相続税の基礎控除(遺産に係る基礎控除)については相続税法第15条に規定が置かれています。基本となる計算方法については同条第1項に規定があります。
相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
引用:e-Gov法令検索 相続税法第15条(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000073)
3,000万円を基準に、法定相続人の数に応じて600万円が加算されていきます。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円と増額していくことになります。
相続人が0人になることも起こり得ます。
この場合でも上の計算式が適用され、結果、基礎控除額は3,000万円となります。
なお、法定相続人が誰もおらず遺言書もない、というケースでは相続財産は行き場を失います。このとき利害関係人の家庭裁判所に対する請求により、相続財産管理人が選任されます。相続財産管理人は相続人捜索の公告を行ったり、特別縁故者に対し相続財産を与えたりといった事務を行います。
そして特別縁故者にも財産が分配されない、または余った財産があるときには、国のものとなります。
相続の放棄があると、その申述をした者ははじめから相続人ではなかったことになります。しかしながら基礎控除の計算においては放棄の申述を無視して含めることになっています。
そのため、被相続人に配偶者と3人の子がいて、子の1人が相続放棄をしたとしても、基礎控除の計算においては4人として計算します。
結果、その額は5,400万円となるのです。
また、被相続人の両親がいる場合に子の全員(3人)が相続放棄をすると、民法上は配偶者と両親が相続人となります。すると相続人は3人ということになりますが、基礎控除においては放棄をする前の状態で計算をするため、合計4人で算定することになります。
両親を含めた6人にはなりません。
放棄ではなく、相続開始前にすでに相続人が亡くなってしまっていることにより、相続をできなくなっているケースも考えられます。
被相続人に配偶者と3人の子がおり、その子の1人であるAが亡くなっているという状況を考えてみましょう。先に亡くなっているAに子(被相続人から見た孫)が2人いるとすれば、民法上も基礎控除の計算上も、孫2人が相続人となります。
その結果、放棄のときのように配偶者と子を合わせた4人で計算するのではなく、配偶者と子2人に孫2人を加えた5人で計算を行うことになります。
養子がいるときには要注意です。
配偶者と子4人(うち養子が3人)の状況を考えてみましょう。
このとき相続人を5人として基礎控除を計算することはできません。養子縁組で無限に節税効果を高めることができないようにしているのです。具体的には、「実子がいる場合においては1人まで」「実子がいない場合においては2人まで」と限度が設けられています。
そこでここで想定した状況においては、配偶者と実子、そして養子1人分を合わせた3人で計算をします。
ただ、特別養子縁組をしている場合は別です。養子のうち1人が特別養子縁組をしている場合には実子と同様に扱うことができるため、基礎控除の計算上、4人の相続人がいることになります。
次に、配偶者と養子3人がいて、そのうち子の1人Aが先に亡くなっている場合を考えてみましょう。特別養子縁組をした者はおらず、Aには子が2人いたとします。
Aが亡くなっていないとすれば、実子がいないため養子2人までをカウントできることになります。しかしAが亡くなったことにより代襲相続人の孫が登場します。孫は養子とは別であるため、実子がいるとき同様、養子を数えられるのは1人までとなります。
結果、配偶者・養子1人分・孫2人の合計4人で基礎控除額を計算することになります。
養子の代襲相続人は、被相続人に養子がいるときは実子として扱うことに注意が必要です。
相続に関しては、「胎児はすでに生まれたものとみなす」旨民法に定められています。通常、胎児に権利能力は認められないところ、例外的に相続権を得るとされているのです。
そうすると相続税の基礎控除額においても含めて計算できそうに思えますが、実際にはそうはなりません。「相続税の申告書を提出する日」までに出生していなければ算入しないこととされています。