遺産を受け取った方は、相続税の計算をして、必要に応じて相続税申告をしなければなりません。そしてこの申告には期限があるため、相続開始後はすぐに申告に向けた各種手続を進めていく必要があります。適切に処理していかなければトラブルを生むことになりますし、税制上のペナルティを受けるおそれもあります。
ここで相続税申告をするまでの流れを説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
相続税の申告について、被相続人の死亡から相続税の申告書の提出および相続税の納付までの流れを以下のSTEP1からSTEP5に手順に沿って解説していきます。
まずは相続財産の把握を行わなければなりません。
不動産や預貯金、株式など、被相続人の全ての財産を漏れのないように調査を行い、相続財産の金額を確定していきます。
そこで、故人の自宅を調査したり取引のあった金融機関への残高照会をしたり、財産の種類に応じた調査を実施します。
こうして故人が所有していた財産の内容・価額をまとめた財産目録を作成していきます。
このとき、プラスの財産だけでなく借入金や住宅ローンなどのマイナスの財産に関してもリストアップすることを忘れないよう注意しましょう。
財産調査に続いて、相続人の確認も行います。
相続人を確定するためには、被相続人が出生して死亡するまでの戸籍謄本を入手する必要があります。
多くの場合は戸籍謄本を取り寄せるまでもなく相続人が把握できているかと思われますが、予期しない人物が相続人として現れる可能性もあります。例えば過去に離婚をしている場合には相続人らが認識できていない被相続人の子がいるかもしれません。隠し子がいるケースもありますので、必ず戸籍謄本をチェックしましょう。
財産と相続人が確定すれば、相続を承認するのか放棄するのか、あるいは限定承認とするのか、その判断をします。
何も手続をしなければ「単純承認」したことになります。このとき、被相続人の権利義務をまるまる承継することになります。
「相続放棄」をすると相続人としての立場を捨て、一切の財産を承継しないこととなります。
「限定承認」の場合にはプラスの財産からマイナスの財産を差引いた財産のみを継承することになるのですが、そのためには相続人全員で限定承認をしなければなりません。
慎重な判断を要するのですが、被相続人が亡くなった日の翌日から3ヶ月以内に決断して手続きを行わなければ単純承認したとみなされます。特別の事情があれば期間を延ばすこともできますが、基本的には3ヶ月で締め切られると認識しておくと良いでしょう。
相続する意向が固まれば、相続人らで遺産分割協議を行います。
相続人全員で、遺産をどのように分割するのか、誰がどの財産をどれだけ取得するのかを話し合います。
話し合った結果は遺産分割協議書として形に残しておきましょう。「遺産分割協議書がなければ無効になる」というわけではありませんが、後々トラブルが起こらないためにも、そして様々な手続きで遺産分割協議の内容を証するためにも、必ず作成しておきましょう。
例えば財産の名義変更や預貯金の引き出しなどの手続を行うときに提出を求められます。書面の作成をしておくとこれらの処理がスムーズに進められるでしょう。
相続人個別の取得財産が定まれば、税理士に頼んで相続税の計算をしてもらいましょう。
控除の適用などにより相続税の申告が必要なくなることもありますが、申告を要するときには相続税申告書を作成し、被相続人の住所を管轄する税務署にこれを提出し、このときに相続税も納めます。
相続税の申告と納税の期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と法律で定められています。
上に挙げた調査等をすべてこの期間内に行わなければならず、財産状況が複雑であったり相続人間の関係性が悪く遺産分割協議がなかなか進まなかったりすると、間に合わないこともあります。
そのため想像以上に時間がかかることに留意し、早めに相続税申告に向けて取り組みを始めるようにしましょう。
上記期限に申告が間に合わない場合、ペナルティを課されるおそれがあります。
1つは「無申告加算税」の支払いです。
無申告加算税とは、正当な理由なく相続税申告書を提出しなかった場合に課される税です。ただし、期限後の税務調査を受ける前に自己申告すれば、低い税率での無申告加算税で良いとされています。
基本は、納付すべき税額50万円までの部分に対して15%、50万円超の部分に対しては20%の税金を上乗せすることになります。しかし期限から1月以内の申告なら無課税、それ以降で税務調査の通知前に自主申告をすれば一律5%の税率適用で済みます。税務調査の通知後であっても、実際に調査が始まる前に申告をすれば50万円までの部分に10%、50万円超の部分に対しては15%で済みます。
「重加算税」もあります。
意図的に相続財産を隠したり申告内容を偽装したりしたときに課せられる税です。無申告加算税に比べてかなり重く設定されており、35%から最大50%もの税率が適用されてしまいます。
もう1つ、「延滞税」のことも忘れてはいけません。
本来の期限の翌日から、実際に納税をするまでの日数に応じて、利息相当の税が課されます。これが延滞税です。無申告加算税や延滞税ほどの税率ではありませんが、遅れるほど積み重なってしまいますので、申告が間に合わない場合でもできるだけ早いうちに対処することが大切と言えます。
「わざと申告をしない」「少なく見積もって申告する」といった悪意ある行為をしないことはもちろんですが、きちんと対処しようと思っても一般の方だけですべてに対応するのは難しいです。困ったときには税理士に相談して、期限内に正確に申告・納税ができるように進めていきましょう。