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相続税の申告が必要なケースとは?基礎控除の額や非課税財産などに注意

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相続により遺産を受け取った方は相続税の計算をして、申告および納税をすることになります。しかし計算の結果、税額がゼロになった場合には納税をする必要はなくなりますし、一定の場合には申告を行う必要もなくなります。
申告の要否はどのように判断するのか、ポイントなる基礎控除、その他控除制度のことなどについてここで説明します。

 

 

相続税の申告が必要なケース

相続税申告が必要かどうかを見極めるポイントは、①遺産額と基礎控除額のバランスと、②適用する控除の種類です。

正味の遺産額が基礎控除額を超える

相続税の計算をするとき、まず遺産総額から「相続時精算課税の適用を受けて贈与した財産」を加算し、「非課税財産」「債務」などを差し引いて「遺産額」を導き出します。
そしてこの遺産額に「相続開始前3年以内に行われた贈与財産」を加算して、「正味の遺産額」を算出します。

 

ただ、正味の遺産額のすべてが課税されるわけではありません。
税額の計算上は「課税遺産総額」が重要なのであり、これは正味の遺産額から基礎控除額を差し引くことで導き出せます。

 

つまり、正味の遺産額が基礎控除額を超えていない場合には課税遺産総額はゼロとなり、この時点で相続税の申告は不要であることが判断できます。

納税は不要だが一定の控除を適用している

納税すべき税額がある場合にはもちろん申告も必要です。
しかし納税額がないからといって常に申告が必要なくなるわけではありません。
「納税額ゼロだが相続税申告が必要」というケースがあるのです。

 

ポイントは、“特定の控除を適用しているかどうか”です。
例えば常に適用される基礎控除に関しては、適用したことを申告しなくても良いです。他にも「未成年者控除」や「障害者控除」など、申告が必要ない控除はいくつかあります。そのためこれら申告が不要な控除のみを利用して税額がゼロとなったのであれば申告は不要となるのですが、反対に申告が必要な控除を使ったのであれば、たとえ税額がゼロであっても相続税申告は必要となります。

 

例えば「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」を利用するときには申告を要します。

 

その他各人利用できる控除の内容はよくチェックする必要があるでしょう。計算も複雑ですし、心配な方は税理士に相談することをおすすめします。

 

相続税申告の必要性を判断する手順

以上のポイントを押さえ、相続税申告の必要性を判断するための具体的な手順を見ていきましょう。

相続財産の調査

まずは遺産総額を把握しなければなりませんので、「相続財産の調査」が必要です。
亡くなった方(被相続人)の自宅等をくまなく調べ、財産に関する資料のチェックを行いましょう。どの金融機関と取引があったのか、どのような種類の財産を持っていたのか、特に価額の大きな不動産については要チェックです。

 

この調査を経て借金等の負債の方が大きいと分かれば相続放棄や限定承認を検討することになるのですが、原則として相続開始3ヶ月以内にその手続を行わなければなりません。相続税の申告にも期限がありますので、あまり時間的余裕がないことを認識の上、専門家に財産調査を依頼することも視野に入れると良いでしょう。

基礎控除額の計算

各人個別の控除や細かな計算をしなくても、正味の遺産額が基礎控除額以下であることがわかれば申告の必要がないことが判断できます。

 

そのため基礎控除額の計算ができるようになっておくと良いです。
難しい計算は必要ありません。次の計算式に従い、法定相続人の数をあてはめれば結果がすぐに出せます。

 

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円×法定相続人の数)

 

多くの場合には特別な調査をするまでもなく法定相続人の数を把握できるでしょう。
しかし戸籍なども詳しく調査していけば予想外の法定相続人が発覚することもあります。そのため相続人調査も忘れずに行う必要があります。被相続人の戸籍の記載から確認が取れるため、すべての戸籍を集めていけば調査が進められます。

利用できる各種控除の確認

基礎控除以外の、各人が利用する控除について確認をしていきましょう。

 

上述の通り、配偶者控除や小規模宅地等の特例を利用する場合には申告をしなければなりません。
申告の不要な控除で税額ゼロにできたのであれば申告は不要です。控除も種類も多く、計算も複雑です。申告内容にミスがあったり、本来必要な申告をしなかったりするとペナルティを課されることもありますので、基礎控除額を超える正味の遺産額があるケースでは特に税理士に依頼して対応することが推奨されます。

 

相続税申告の必要性を判断するときの注意点

相続税申告の必要性を判断する上では、非課税財産の存在も考慮しなければなりません。また、相続時精算課税制度を過去に利用していないかどうか、相続が開始される直前に行われた贈与がないかどうか、そして不動産・非上場株の評価にも要注意です。

非課税財産の有無

基本的には被相続人が所有していたすべての財産が相続税の計算の対象となります。
しかし中には「非課税財産」というものもあり、その財産に関しては課税から外れますので、遺産額には含めなくて良いです。

 

相続税法等に非課税財産が列挙されています。
例えば以下の財産はいずれも非課税財産です。

 

  • 墓地、墓石、仏壇、仏具など日常礼拝に使うもの
    ※骨董的価値をもつ、商品や投資対象になるものなどは別
  • 宗教や学術、その他公益目的の事業を行う者が取得した財産であって公益目的の事業に使うことが確実なもの
  • 条例により、心身障害者共済制度に基づく給付金を受ける権利
  • 相続による取得とみなされる生命保険金や退職手当金等のうち「500万円×法定相続人の数」までの部分

 

他にも非課税財産に該当する財産がありますので詳しくは税理士に聞いてみましょう。

相続時精算課税制度の利用の有無

相続時の財産取得に対しては相続税が、生前の贈与に関しては相続税が課税されます。
そして贈与税課税の原則は「暦年課税」です。年間110万円以下なら納税の必要がなくなります。しかし別途手続を行うことで「相続時精算課税」とすることも可能です。

 

相続時精算課税制度によれば、贈与に対して2,500万円までは贈与税非課税となりますが、その分相続時に相続財産と合算して計算を行うことになります。

 

贈与時の負担を軽減することができますが、相続税の計算時に忘れず含める必要がありますので要注意です。

相続開始前3年以内の生前贈与の有無

暦年課税の場合、年間110万円以内で生前贈与を行えば、贈与税も相続税の課税されることなく財産の移転ができます。

 

しかし相続開始前3年以内の贈与に関しては、実質相続財産の移転であるとして相続税の計算に含めるというルールが設けられています。そのため相続開始前3年以内の贈与分に関しても忘れずに合算しましょう。

 

なお、相続開始直前の贈与でも加算されないケースがあります。
例えば「直系尊属(親や祖父母など)から住宅取得資金として受けた贈与」「直系尊属から教育資金や結婚・子育て資金として受けた贈与」などは、所定の要件を満たせば一定額まで相続税の計算に含めません。
また、推定相続人以外にした贈与に関しても加算はされません。相続人にならない者に対して行った贈与であれば3年以内の行為でも相続税の計算に含めません。

不動産や非上場株式の評価

現金などは価値の評価で迷う必要がありません。
これに対して不動産や非上場株式などは「○○円」などと、見てすぐに評価することは難しいです。

 

しかし相続税の計算をする上では評価額を把握する必要があります。
不動産の場合には固定資産評価額や路線価に応じた評価方式を採用して計算することになりますし、非上場株式に関しては当該株式を発行している株式会社に問い合わせるなどして算定しなければなりません。上場株式であれば市場で価格が決まるためそれほど難しい作業ではありませんが、非上場の場合には市場価格が付いておらず、会社の財務状況などの情報から価格を調べる必要があるのです。