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成年後見制度を利用する前に知っておきたい7つの注意点を紹介

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成年後見制度は、判断能力が衰えた本人に代わり契約締結など重要な行為を行うことを後見人に認めて、法的に保護することを目指す制度です。保護対象となる本人(被後見人)が悪徳業者に騙されたりするリスクを取り除くために効果を発揮します。

ただし同制度の利用にあたっては注意すべきこともたくさんあります。当記事では7つに分けてその注意点を紹介していきますので、利用を検討している方はご一読いただければと思います。

注意点①任意後見の準備を始めるタイミング

成年後見制度には任意後見と法定後見の2種類があります。

 

法定後見は本人が判断能力を欠いた・衰えたという場合に利用するものであり、すでに本人がリスクにさらされている状況下で手続を開始することになります。①成年後見、②保佐、③補助の3つの類型があり、各枠組みで設計されたルールに基づいて本人を保護していくことになります。

 

一方の任意後見は本人の判断能力が衰えてから利用することは基本的にはできません。少なくとも任意後見契約を締結するのに十分な判断能力は必要です。どのような形で今後支援を行うのか、本人と任意後見人となる人物が契約を交わさないと始められないからです。

 

本人がして欲しいこと、本人が望むことを契約内容に反映させることができ、任意後見であればより本人のニーズを満たすことができるでしょう。

 

ただし、判断能力の低下は自覚することが難しく、気付いたときには法定後見しか選択肢が残っていないという事態も起こり得ます。そのため早いうちに成年後見制度の利用について検討を始めることが重要です。将来の財産管理、法律行為について少しでも不安を抱いたタイミングで一度専門家に相談することをおすすめします。

注意点②希望を出した人物が後見人になれるとは限らない

成年後見制度の利用にあたり、後見人となる方の候補者を挙げることも可能です。

 

ただ、その希望を出した人物が後見人になれるとは限りません。決定権は家庭裁判所にあり、その候補者が後見人としてふさわしくないと評価されるときは別の人物が選任されることもあるのです。

 

予定していた人物が選任されなかったからといって、申し立てを取り下げることもできません。いったん申し立てを行うと、その取り下げをするには家庭裁判所の許可が必要だからです。

注意点③後見開始後は本人のできることが限られる

後見開始により、被後見人となる本人は法的な保護を受けられます。騙されて契約締結をしてしまったとしてもその行為を取り消せるケースがあります。

 

しかし逆の言い方をすれば、「後見人に代理権が認められる行為に関して、今後本人は自由に行うことができなくなる」という意味でもあります。本人も好きに契約を交わし、悪い結果が生じたときは後見人に取り消してもらう、などといった運用はできません。

 

保護を受ける一定の範囲内では制限を受けるということを理解しておかないといけません。

注意点④後見人等に報酬が発生する

法定後見・任意後見のいずれの制度を利用する場合でも、費用の負担がかかります。

 

申立関連で数万円、場合によっては裁判所から鑑定を求められることもあり、そのときは10万円程度費用が増加します。

 

また、後見人や監督人に対する報酬の支払いも忘れてはいけません。

 

家族が後見人になる場合など無報酬となるケースもありますが、その他専門家や法人などに依頼するときは月々2万円ないし5万円ほどの報酬が発生します。長期にわたり毎月数万円の費用が発生することは知った上で制度の利用を検討することが大事です。

 

「制度の利用はしたいが費用について不安がある」という場合は専門家や市区町村、法テラスなどに相談するのも1つの手です。成年後見制度にかかる支援を実施していることもありますし、相談を通じてそういった制度の存在や利用条件についてアドバイスがもらえるかもしれません。

注意点⑤介護やお世話を依頼する制度ではない

成年後見制度は介護をしてもらうための制度ではありません。契約締結など、法律行為に関する支援制度です。そのため後見人が本人の身の回りのことすべてにつきサポートを行うわけではありません。

 

将来の不安が財産の管理や契約行為などではなく、身の回りのお世話に関することである場合は、別のサービスを検討することになるでしょう。

 

ただし、後見人がヘルパー派遣の契約締結や介護サービスへの申し込みなどの行為を代わりに行うことは可能です。直接後見人がお世話をするわけではありませんが、後見人を通じて間接的に介護などの事実行為をサポートしてもらうことは可能です。

注意点⑥積極的な資産運用は依頼できない

成年後見制度は本人の保護が主な目的であり、そのために必要な財産管理などを行います。

 

しかしながら、本人が得をするための資産運用は成年後見制度がカバーする範囲ではなく、同制度の利用により支援を受けることは期待できません。

 

例えば不動産の管理、生活費確保のための不動産売却などであれば後見人が行うことも不可能ではありません。一方で不動産投資や株式投資により現在の資金をさらに増やすといった行為は原則行うことができません。

 

同制度でどのような行為を支援してもらえるのか、逆にどのような行為が対象範囲外となるのか、この違いを正しく理解しておく必要があるでしょう。

注意点⑦別の制度の利用も検討する

前項で説明した通り、成年後見制度は万能ではなく活躍できる範囲にも限りがあります。そこで将来の判断能力低下を不安視するときでも、成年後見制度以外の制度や仕組みについても検討することが大事です。

 

常に成年後見制度が最適であるとは限らず、例えば家族信託の利用により解決するのが適している場面もあります。様々な視点から問題解決を図ることが大事ですので、専門家も頼りに今後取るべき対策の検討を進めると良いでしょう。