遺産相続で税金がかかるということはご存知かと思います。しかし、具体的にどれ程の金額を納めなければならないのか、計算方法までは知らない方が多いでしょう。計算過程では税率をかけることになりますが、そう単純に納税額は確定しません。
そこで以下では相続税に関する申告のこと、税率のことや計算方法について理解できるよう、解説していきます。
目次
相続では様々な遺産が引き継がれ、その際には課税もなされます。納税が必要な場合には遺産等について申告義務が課せられ、一定期間内に所定の手続きを進めなくてはなりません。
常に相続税の申告が必要になるわけではありません。なぜなら、納税は常に必要なものではないからです。むしろ世の相続は、納税をするほどではないケースの方が多いです。
というのも、基礎控除額だけで数千万円があり、これを下回る場合には細かな計算をするまでもなく納税の必要がなくなるのです。
その場合には申告すら行う必要がありません。
仮に大きな遺産があり、申告の義務があるとしましょう。
このときは期限にも注意すべきです。
「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月」が期限です。期限が土日祝であればその日の翌日が期限になります。
間に合わなかった場合、本来納めるべき税金に加え延滞税がかかることもあるため、十分注意しなければいけません。
なお、申告先は被相続人の住所地を所轄する税務署であり、申告する者の住所が基準とはなりませんのでこちらにも注意が必要です。
納税に関しては税務署のほか、金融機関でも可能です。申告が間に合っても納税が間に合わなければやはり延滞税がかかる可能性があります。一括での納付が原則とされるものの、なかなかこれが難しい状況もあるでしょう。例えば評価額の大きな動産・不動産だけを承継した場合には、手元にお金が入るわけではありませんので、納税で大きな負担がかかることがあります。一括が難しいのであれば何年かに分けて納める方法もありますので、別途手続きを行うとよいでしょう。
相続税を計算する上では「税率」というものが重要になってきます。相続分に対して一定の税率を乗じ、相続税を計算するのです。
以下のように税率が定められており、例えば1億円の取得金額なら30%の税率を乗じ、700万円の控除をした2,300万円が算出されます。ただ、この金額がそのまま納税額になるわけではありませんので、この点理解し、勘違いのないようにしましょう。
これはあくまで「相続税の総額の基となる税額」を計算するために用いるものであり、実際の納税額を計算するには次項の手順に沿って計算を行う必要があります。
法定相続分に応ずる取得金額:税率:控除額
納付すべき税額は以下の手順に沿って計算していくことになります。ここでは基本的なことに絞って説明していきます。
まずは全体の課税価格を把握していきます。
そのためには相続人それぞれの課税価格を算定しなければなりません。
この計算においては、「相続や遺贈で取得した財産の価額」に、みなし相続によって得た分や相続の始まる前3年に受けた被相続人からの贈与分などを加算します。
これを各人につき計算し合計すれば、全体の課税価格が把握できます。
手順1ではあくまで全体の課税対象を見定めたに過ぎません。そこで次に、以下のように全体の相続税を算定していきます。
こうして、当該相続における相続税の総額が計算できます。ただ、この手順で算出された金額をそのまま納付するわけではありません。ここからさらに各々の具体的な納付額を計算していくのです。
いよいよ、相続人それぞれが納付すべき金額を計算していきます。
まずは手順2で算出した相続税の総額から、各相続人の税額を割り出します。こちらの計算においては法定相続分ではなく、実際に取得した課税価格に応じて割り振っていきます。
つまり、相続税の総額×(各人の課税価格/課税価格の合計)の計算を行います。
さらに以降は、個々の属性・状況に合わせた計算を行います。
主に以下の項目を考慮していくことになります。
基本的には適用できる控除がないかどうかを判断していきます。未成年者や障害者、配偶者などが利用できる控除制度がありますので、これを忘れず計算します。特に配偶者に関しては大幅な軽減措置があり、納税が不要なケースも多いです。
ただし2次相続など、将来のことも想定した節税を目指すなら戦略的に遺産の分配をしていくことが大事です。
以上のように、納税すべき相続税を把握するにはいくつかのステップを進めていく必要があります。
どんな場合にどんな控除が適用され、いくら控除されるのか、割増されるケースに該当していないかどうかといった判断は容易ではありません。そもそもこの財産は課税対象なのか、というところから判断していかなければ正しい金額がわかりません。
そのため、相続税について不安のある方は、税理士への相談がおすすめです。事前に相談しておくことで効果的な節税方法なども知ることができるでしょう。