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成年後見制度を利用する手続とその流れ、必要書類や費用など

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加齢や認知症により判断能力が低下した方、障害を持つ方などは、契約締結などの法律行為を独立して行うことが難しいです。そのため必要な契約ができなかったり、悪徳業者からの詐欺被害に遭ったりすることも起こり得ます。
こういった問題を防ぎ、本人の権利・財産を保護するために役立つのが「成年後見制度」です。役所の窓口で届出をして、さっと利用できる制度ではなく、裁判所も介した厳格な手続を進めていく必要があります。この記事で手続全体の流れや準備すべき書類、費用などを解説していきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。なお、ここでは成年後見制度のうち「法定後見制度」に焦点をあてて解説していきます。

 

成年後見制度の全体像

成年後見制度、とりわけここで解説する法定後見制度を利用するには、家庭裁判所への申し立てが必要です。

 

ただ、いきなり申し立てを行うのではなく、医師に診断してもらったり必要書類を収集したり、といった作業が準備として必要になります。

 

その後家庭裁判所に申し立てをし、審理を受けます。家庭裁判所の判断に従い後見人が選任され、その後面接を通して後見人を選任することの審判が確定します。
後見登記を行い、成年後見制度に基づくサポートが開始されます。

 

成年後見制度利用までの流れ

後見開始までに行わなければならない手続は多数あります。いくつかの段階に分けて、以下で説明をしていきます。

 

医師の診断を受ける

家庭裁判所への申立て時に、医師の作成する診断書が求められます。そのためまずは診断を受けておく必要があります。

 

医師の診断結果が決定的な判断材料になるわけではありませんが、診断結果が「後見」「保佐」「補助」の区分を左右する可能性もあります。
判断能力の低下度合いが大きいほど後見人の権限が強い「後見」となりやすく、次いで「保佐」が、そしてもっとも軽度の場合には「補助」として後見が開始されることになります。

 

申し立て先の裁判所のチェック

具体的な必要書類を把握するためにも、申し立て先となる裁判所を確認しましょう。

 

申し立て先の家庭裁判所は“被後見人となる本人の住所地を管轄とする家庭裁判所”です。
申立人の住所に依存しないことは覚えておきましょう。

 

必要書類の準備

申し立てでは、次のような書類を準備することになるでしょう。

 

  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 本人と後見人候補者の住民票または戸籍附票
    ※後見人候補者が法人の場合は商業登記簿謄本(登記事項証明書)
  • 後見・保佐・補助開始等申立書
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 親族の意見書
  • 後見人候補者事情説明書
  • 後見登記されていないことの証明書
  • 診断書
  • 本人の財産目録
  • 本人の収支予定表
  • 本人の健康状態を示す資料

 

その他財産に関する資料として「預貯金、有価証券の残高が示せる書類」や「不動産登記事項証明書」「ローン契約書の写しなどの負債が示せる書類」なども必要に応じて準備します。

 

詳しくは申し立て先の家庭裁判所で確認を取っておきましょう。上に挙げたものでも準備が必要なかったり、逆に準備が求められる書類が出てきたりもします。

 

費用の準備

申立手数料を収入印紙で支払います。

「後見または保佐開始」に関しては800円分。
「保佐または補助開始」に加え代理権もしくは同意権も付与する場合は1,600円分。代理権と同意権のいずれも付与する場合には2,400円分の収入印紙代が発生します。

 

これとは別に、郵便切手代も必要です。具体的な金額は申立先での確認が必要ですが、おおむね数千円程度で済むことがほとんどです。

 

後見登記をするために必要な手数料も収入印紙として2,600円分が求められます。

 

ここまでのすべてを合計しても、それほど大きな費用負担はかからないことがわかるでしょう。
ただ、必要に応じて裁判所が鑑定を求めることがあります。その場合鑑定費用として10万円程度が発生します。その可能性があることも覚悟しておくことが大切です。

 

家庭裁判所への申し立て

必要書類一式を家庭裁判所に提出し、これを持って成年後見制度への申し立てとします。
なお、直接持参しなくても郵送で提出することも認められています。

 

家庭裁判所での審理の開始

申し立てをしても成年後見制度が利用できるとは限りません。裁判所の審理を経て、その必要性があるものと評価されなければなりません。

 

そこでまずは書類審査が行われます。提出した書類に不備はないか、記載内容を見て後見開始が相当といえるのかどうかを見極めていきます。

 

審理の過程で、申立人や後見人候補者が面接を求められることもあります。
その面接での様子が、本人の判断能力や生活状況・財産状況を把握する資料となります。

 

親族の意向が聴取されることもあります。そこで後見人候補者に対する反対意見や何らかの問題が見つかった場合は、候補者以外からの選任がなされる可能性が高くなります。

 

家庭裁判所による審判

審理は数ヶ月間かかります。3,4ヶ月はかかるものと考えておきましょう。

 

その後、審判という後見開始を決定づける手続が行われます。

 

そして審判書が送付されてから2週間以内の期間中、不服申し立てがされなければ、審判内容が確定します。
そのため結果に不満がある場合には、審判結果が出てから2週間以内に不服を申し立てる必要があります。

 

後見登記と後見の開始

審判確定後、裁判所が法務局に対して後見登記の依頼を行います。後見登記により、誰がどのような権限で後見を行うのかが公示されます。

 

この登記が行われることで、後見人は様々な手続を行う際も、自らが裁判所に選ばれた後見人であると証明することができるのです。