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相続税の「節税対策」と「納税資金対策」! 具体的な手法や注意点など

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相続税対策には大きく①節税対策と②納税資金対策の2つがあります。①は納めるべき相続税の額を下げるための対策。②は納税に向けて現金等を確保するための対策です。
この両方の対策を打っておくことで相続人の負担を軽減することができます。以下で各対策の手法を紹介していきます。

 

節税対策の手法

多くの相続財産を得るほど、多くの相続税が課税されます。
そのため「相続財産を減らす」ことで相続税の課税額も下げることができます。これが節税対策の1つです。

 

他方、財産は現金のように価値が明らかなものばかりではなく、不動産のように金銭に置き換えた評価をしないと課税価格がわからないものもあります。そこでそのような財産に関しては「評価額を下げる」という節税のやり方もあります。

 

さらに、税制上一定条件下で控除が適用させられることがあります。その場合、実際の課税価格から一定額を差し引いて相続税の計算をすることが認められます。そこで「控除制度を利用する」ことで節税効果を高めることもできます。

 

まずは節税対策の手法としてこの3つに焦点を当てて解説していきます。

相続財産を減らす

相続財産を減らせば相続税の額も小さくなります。
当然、課税財産をゼロにすれば相続税もゼロにすることができ、節税効果を最大にすることができます。しかし遺産相続による経済的利益もあまり得られず、これでは本末転倒です。

 

「相続財産を減らす」といっても財産を捨てるわけではありません。
そこで“生前贈与”により相続財産を減らすのが対策の基本となります。

 

相続時の財産移転を契機に課税がなされるのであれば、相続を契機としない財産の移転をすれば良いのです。極端な話、生前にすべての財産を推定相続人に渡しておけば、すべての財産を得つつも相続税の課税はゼロにすることができます。

 

ただ、贈与税の存在を忘れてはいけません。
相続とは関係なく、財産の贈与をしたときには贈与税が課税され、結局納税の負担を負うことになってしまうのです。
しかしながら贈与税にも基礎控除があります。その枠内である年間110万円までの贈与であれば非課税で財産を他人にあげることができます。相続税と贈与税のバランスを考慮しつつ、上手く生前贈与を繰り返すことが大切です。

 

また、生前贈与を活用した節税の手法には他に「住宅取得等資金の贈与」などもあります。
両親あるいは祖父母などが、自宅の購入のためにした贈与に関しては、一定限度で非課税とすることができる制度があります。
贈与のやり方についても工夫を凝らすことで大きな節税効果が得られますので、詳しくは税理士に相談してみましょう。

 

相続財産の評価額を下げる

財産自体を減らさなくても、評価額がゼロになれば相続税もゼロになります。
例えば唯一の財産としてある家屋を所有していたとしましょう。家屋など不動産は数千万円もの価値を持つこともありますが、非常に古い物件でその他諸事情により評価額がゼロになったとすれば、当該家屋を得ても相続税の負担は一切しなくてもよくなります。

 

ただ、財産をわざと毀損させるなどして評価額を下げるわけではありません。
税制を上手く活用して評価額を下げていく必要があります。

 

代表例は“小規模宅地等の特例”の活用です。
「生活をするために必要な住居に対する課税はできるだけ避けよう」との考えに基づき、被相続人と相続人が一緒に暮らしていたなどの事情があるときには、最大80%も評価額を下げられるという内容の特例です。
とても節税効果の大きな特例ですので、自宅の相続をする場合には同特例の適用は必ず検討するようにしましょう。

 

これとは別に“土地に賃貸物件を建築する”という手法もあります。
賃貸物件の敷地は、所有者が自由に扱えなくなることから評価額が下がります。また、アパートやマンションを建築する際に借り入れをすれば債務が大きくなり、その分課税財産から差し引いて計算することができます。
そのため土地の評価額を下げるだけでなく、いったん大きな債務ができることで相続税額は下がり、その後賃貸物件を運用していくことで不動産収入を得ることもできるようになります。
しかしながら、相続人が賃貸物件の運用を適切に行えることが前提です。なかなか難易度は高いですが、成功すれば大きな節税効果が得られるでしょう。

 

控除の適用

多くの財産があり、評価額が高かったとしても、控除額が大きければ納税額を小さくすることはできます。

 

控除にも色々ありますが、ここで紹介したいのは“生命保険の非課税枠の活用”と“基礎控除の増額”です。

 

生命保険を使えば、被相続人は生前の保険料の支払いにより財産を減らすことができ、その分に対応する保険金を相続人に渡すこともできます。税制上、保険金に関しても一定条件下で課税をされてしまうのですが、法定相続人1人につき500万円の控除枠が設けられています。
そのため1,500万円を保険金として受け取れるようにしても、法定相続人が3人いる場合にはすべて非課税でその保険金を渡すことができるのです。
法定相続人の数は生前に把握することができますので、その数に合わせて計画的に生命保険を利用すると良いでしょう。

 

「遺産に係る基礎控除」も重要です。
3,000万円に対し、法定相続人1人あたり600万円を加算した額が基礎控除額となります。
法定相続人が3人であれば次の計算式で控除額が算出できます。

 

基礎控除額 = 3,000万円+(600万円×3人)

      = 4,800万円

 

つまりこのとき、課税財産が4,800万円以下であれば、その時点で相続税を納める必要がないことがわかります。
法定相続人の数は基本的に固定ですが、“養子縁組”により増やすことも可能です。
次のルールに従う必要がありますが、節税対策として検討する価値はあるでしょう。

 

<基礎控除額の計算に含めることができる養子の数>

  • 実子がいる場合 :養子1人まで
  • 実子がいない場合:養子2人まで

 

納税資金対策の手法

節税対策をしても、多くの資産がある場合にはある程度の納税は避けられません。相続財産の価額を超える納税額となることはありませんが、納税が原則現金であることから、“納税資金の負担がまるまる相続人にかかってしまう”という事態も起こり得ます。

 

例えば1億円もの価値がある不動産を得たとしましょう。仮に相続税の納税額が1,000万円になったとしても、全体としては9,000万円のプラスです。
ただ、相続人が得たのは不動産であり、1,000万円の支払いは元々相続人が持っていた現金等から負担しなければなりません。それだけの預貯金等がない場合には、不動産を売却するなどの対応を取らなければなりません。

 

こうした問題を避けるために重要なのが納税資金対策です。
「納税に使える現金や預貯金を割合多く受け取らせる」ことが基本対策です。具体的手法を以下で見ていきましょう。

 

現金や預貯金の割合を増やす

不動産の割合が多い場合などには資産の組み換えを検討しましょう。
不動産の他、高価な腕時計や宝石、自動車、有価証券などもすべて課税対象です。現金に換金することもできますが、すぐにできるとは限りませんし、相続人に手間がかかります。また、急いで売却しようとすることで十分な交渉ができず、本来の価値より下げて換金されてしまうおそれもあります。

 

そのため現金等が不足する場合、被相続人となる本人側で事前に換金しておくと良いでしょう。

 

資産の組み換えとして特に検討したいのが“生命保険の利用”です。
生命保険は節税対策になるだけでなく、納税資金対策としても有効です。相続人は保険金を受け取ることになり、その金銭をそのまま納税資金に充てることができます。

 

生前に金銭を与えておく

納税資金対策で“生前贈与”をするのも有効です。

 

現金などを贈与税の非課税枠内で与えておけば、その分を納税資金に充ててもらえます。
不動産などの資産の売却、もし空き地などの遊休資産があるのならこれを売却して納税資金を増やしておきましょう。

 

上述した賃貸事業を始めることでも対策になります。
ただし、家賃収入に対してその後所得税を支払う必要はあるため、その点注意が必要です。

 

相続税対策をする上での注意点

相続税対策はここで紹介した手法以外にも多数あります。
とはいえ、そのすべての手段が誰にでも利用できるわけではありません。各人状況に合った手法を選択する必要があり、その判断ができるだけの税に関する知識も必要です。

 

そこで、相続税対策は税のプロである税理士に相談して進めることが大切です。
書籍やネットなどから基本的な情報を得ることはできますが、各対策のバランスを考慮して全体としての最適化を図るのは相当の知識と経験が必要です。

 

また、間違った節税対策をしてしまうことで脱税となってしまい、ペナルティを課されてしまう危険もあります。そのため専門家の助言を受けず独力で行き過ぎた対策をとらないよう注意しなければなりません。