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生前贈与と遺贈の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを比較

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「生前贈与」と「遺贈」、これらは財産や資産の譲渡に関する行為であり、受贈者・受遺者のほか、相続人にも影響を与えることとなります。どちらも財産を渡す行為ではあるものの異なる性質を持っていますので、財産を所有している方はそれぞれの特性を理解した上で手段を選択することが大事といえます。

 

当記事でそれぞれの特徴や違いを整理しますので参考にしていただければと思います。

生前贈与について

生前贈与とは「贈与」のことです。相続前に行うことを強調した贈与といえます。

 

法的には贈与とイコールの関係にあり、契約締結が前提となる以上は受贈者となる相手方との合意が必要ですし、書面で契約を交わしたときは勝手に贈与を撤回することもできません。

また、相続前に贈与が行われますので、将来被相続人となる方は生きているうちに財産移転の手続を行うことができます。受贈者の手に渡ることを確認することができますので、絶対に渡したい財産があるときは贈与を行うと良いかもしれません。

 

なお、贈与には「死因贈与」というものもあります。こちらは事前に贈与契約は締結するものの効力が生じるのは自身が亡くなってからです。この場合は受贈者に財産が移転し、管理する様子を見ることはできません。

メリット

生前贈与のメリットは次のようにまとめられます。

 

  • 節税対策として事前に取り組みやすい
    贈与した財産については基本的に相続税の課税対象外。相続税の節税対策として生前贈与を行うことも可能。
  • 税制上の特例を使えば節税効果が高まる
    生前贈与では贈与税が基本的に課税されるが、一定の財産、一定の方法による場合、特例が使えて小さな税負担で贈与ができる。
  • 確実に財産が渡せる
    生きているうちに贈与を行うことで、財産が移転したことを確認できる。

  • 事業承継も見守れる
    個人事業における事業用財産、株式会社における株式を贈与することで事業承継ができ、その後経営の指南をしながら見守ることができる。

デメリット

生前贈与にはメリットがある一方で、次のようなデメリットも存在します。

 

  • 自分のものとして財産が使えなくなる
    所有権が他者に移るため「生きているうちはその財産を使いたい」という場合に向かない。株式の場合は経営権を譲渡することになる。
  • 贈与税の負担が大きい
    税制上の特例を利用できれば節税効果は得られるが、基本的に相続税より贈与税の方が負担は大きくなりやすい。
  • 結局相続財産として計算されることがある
    相続開始前3年以内の生前贈与については「生前贈与加算」のルールにより、相続税の計算に含めないといけない。そのため相続直前に急いで贈与をしても税法上のメリットはえられない。

  • 特別受益とみなされて相続分が少なくなることがある
    生前贈与が遺産の先渡しと評価されると「特別受益」を受け取ったとしてその分相続分が少なくなる。これを回避する必要があるときは遺言書への記載が必要。

遺贈について

次に「遺贈」について解説します。

 

遺贈とは遺言書による財産を譲渡することを意味します。

 

遺言書は遺言者が1人で作成することもできることから、財産を受け取る受遺者の意思とは関係なく譲渡が可能です。撤回も自分だけの意思で行うことができます。ただし効果が生じるのは自身が亡くなってからであり、遺言書を作成してからその効果が生じるまでに長い期間が経過することもあります。

メリット

遺贈をすることのメリットは次のようにまとめられます。

 

  • 相続開始まで遺贈の意思を隠すことができる
    遺言書は相続人に秘密で作成できる。そのため誰に何をあげようとしているのかを隠しておくことができる。
  • 相続開始まで自分の財産として使える
    自宅や生活費のように自分自身で使う必要があるものでも、遺贈の対象としておけばギリギリまで自らの財産として使用することができる。
  • 贈与契約や財産移転手続の手間がかからない
    遺贈の場合、効果が生じるのが相続開始後であるため、遺言者本人に契約締結や名義変更等の手続の負担がない。
  • 遺産分割で相続人を悩ませずに済む
    遺言書で誰に何をあげるのか、どのように遺産分割するのかを指定しておけば、相続開始後の遺産分割協議の争点を減らすことができる。

デメリット

良い面だけでなくデメリットも遺贈にはあります。以下の点には注意が必要です。

 

  • 形式不備により遺言書が無効になることがある
    遺言書は民法所定の方式に従って作成されなければならない。間違った方法で作成していると無効になってしまう。
  • 遺言通りにならない可能性はある
    基本的には遺言書に記載した内容に相続人は従うことになるが、関係者全員の合意があれば遺言に従わない遺産分割が可能。
  • 相続人や受遺者間でトラブルが起こる危険がある
    特定の人物に利益が偏っている場合、他の相続人から不満が出てくる可能性がある。
  • 受遺者が遺留分侵害額請求を受ける可能性がある
    全財産を遺贈しても、遺言者の兄弟姉妹以外の相続人は遺留分を主張して受遺者に一定額の支払いを求めることができる。請求を巡ってトラブルに発展することもある。

生前贈与と遺贈の違い

以上で説明した特徴を踏まえ、生前贈与と遺贈の違いを整理していきましょう。

 

項目

生前贈与

遺贈

概要

自身の生存中に財産を譲渡する

死後、遺言書に基づいて財産を譲渡する

移転の時期

贈与者の生存中

遺言者の死後

移転の実効性

移転したことの確認ができる

移転したことの確認ができない

手続

贈与契約の締結

※書面は必須ではない

遺言書の作成

※相手方の同意は不要

課税

贈与税

※生前贈与加算の適用を受けると相続税が課税

相続税

節税対策

贈与税における特例を利用することで大きな節税効果が得られる

直接的に大きな節税効果を得ることは難しい

相続トラブルへの影響

特別受益にあたるか否かで揉める可能性がある

相続バランスの不平等や遺留分について揉める可能性がある

事業承継への影響

見守ることができる

一切関与できない

 

今すぐ財産を渡したいのであれば生前贈与を選択する必要がありますし、自分が亡くなった後で良いという場合には遺贈を選択しても良いでしょう。

 

ただしどちらにしても税金の負担を負うのは財産を受け取る受贈者・受遺者側です。その方々のために節税対策や納税資金対策を取りたい場合は税理士に相談して、どのように財産を渡すべきか検討を進めていくことがおすすめです。