不動産相続には費用がかかります。土地や建物を相続により取得する方は登記を行う必要があり、その際登録免許税が発生します。ほかにも、相続手続を進める際用意しておかないといけない書類の発行手数料であったり相続税であったり、さまざまな費用の負担が生まれます。
ただし発生する費用の種類やその大きさは状況により異なります。不動産相続において、どんなときにどんな費用がかかるのか、ここにまとめましたので参考にしてください。
目次
不動産が残されているかどうかに限らず、相続手続の際は戸籍謄本等の書類集めをしないといけません。このとき大きな額ではありませんが、書類の発行手数料が発生します。
また不動産を相続することになれば「相続登記をするための登録免許税」が発生しますし、遺産の総額が大きなときは「相続税」の納付も必要となります。
相続が開始されると、まずは相続人の調査を行わないといけません。そのためには戸籍情報が記された書類の取得が必要ですし、その後の各種手続において本人確認書類の提出を求められることもあります。
そこで以下の書類が必要となることがあります。
準備する書類例 | 書類の概要 | 発行手数料/通 |
---|---|---|
戸籍謄本 | 法定相続人の確認をするための資料となる。相続手続では必須。 | 450円 |
除籍謄本 | 死亡や結婚・離婚により在籍する人が誰もいなくなった戸籍のこと。 | 750円 |
改製原戸籍 | 法改正が行われる前の戸籍のこと。 | 750円 |
戸籍の附票 | 戸籍が作られてから現在に至るまでの住所が記録されたもの。 | 300円程度 |
住民票 | 氏名、性別、生年月日、世帯主との関係、住所などが記されたもの。 | 300円程度 |
住民票除票 | 引越しや死亡時に住民登録が抹消される。この抹消された住民票のこと。 | 300円程度 |
印鑑登録証明書 | 印影をあらかじめ届け出ておくことで取得ができ、本人の持つ実印であることの証明ができるもの。 | 300円 |
※市区町村によって発行手数料が若干異なることに注意。
不動産を相続した場合、名義変更をするために登記申請をしないといけません。
※2024年4月から、相続登記は義務となった。法改正以前に相続した不動産に関しても、3年以内に相続登記を行わないといけない。
この相続登記には手数料として「登録免許税」が発生します。
費用の大きさは不動産の固定資産税評価額×0.4%で計算できますので、例えば固定資産税評価額5,000万円の土地であれば、登録免許税の額は20万円となります。固定資産税評価額1,000万円の家屋なら、登録免許税の額は4万円です。
相続や遺贈により取得した財産を合計し、その額が遺産に係る基礎控除額を上回るときは、相続税が発生します。
※税額控除の適用により納付額がゼロになることはある。
個別の財産課税されるものではありませんし、不動産以外についても同じように計算されますが、特に土地を相続するときは相続税評価額が他の財産より大きい傾向にありますので要注意です。
また、相続税評価額を正しく計算することは難しく、評価額を大きく下げられる「小規模宅地等の特例」の適用について評価するのも簡単ではありません。そこで相続税の計算を行うときは税理士に任せるのがおすすめです。
不動産を相続してからも、費用はかかり続けます。少なくとも「固定資産税」が維持費としてかかるほか、売却をする場合でも売却利益に対する「譲渡所得税」が発生し、取引にあたって不動産会社を利用するなら「仲介手数料」も発生します。
不動産を所有している方には「固定資産税」がかかり続けます。
※都市計画施行区域では「都市計画税」もかかる。
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に対して課税され、その負担は「課税標準」に「標準税率(1.4%)」を乗じて算出できます。
※課税標準は各自治体の固定資産課税台帳に登録される評価額のことで3年おきに見直される。
そこでこの計算式に従うと、課税標準5,000万円の場合、70万円の固定資産税が発生することになります。ただし軽減措置の適用を受けられることもありますし、具体的な金額を把握しておきたいという方は税理士に相談して計算をしてもらうと良いでしょう。
相続した不動産を自宅として使う場合はそのまま持ち続けることになるでしょう。しかしすでに自宅を所有している場合であって、賃貸に出せるほどの物件ではない場合、無駄に維持費がかかり続けてしまいますので売却も視野に入れます。
そして売却をしたときに大金を手にする可能性があるところ、その利益に対して「譲渡所得税」が発生することもあります。
譲渡所得税の大きさは、「譲渡によってどれだけの利益が発生したか」で測ることができます。大事なポイントは、受け取った金銭のすべてに課税されるわけではないということです。
売却価格から譲渡費用や取得費を差し引いて譲渡所得が計算されますし、相続によって取得した不動産に関しては相続税がかかっていることもあります。この相続税額のうち一定金額は、取得費に加算することも認められていますので、さまざまなお金の流れを考慮して計算しないと正しい金額は把握できません。
なお、税率は当該物件を所有していた期間に応じて変動し、所有期間が5年以下か5年超かで大きく異なります。
※相続により取得した場合、所有期間は「相続したとき」を起算日とせず、「被相続人の取得日」を起算日とする。そのため低い税率が適用される長期譲渡となるケースが多い。
※所定の要件を満たすことで3,000万円特別控除を適用できることもある。
不動産の売却は売主(相続人)と買主だけで進めることも可能ですが、双方にリスクがあるため、通常は不動産会社を介して取引を行います。
不動産会社が間に入ることで手続が円滑に進めやすくなり、買主を見つける作業も任せられます。その反面、必要な作業を代わりにしてもらっているため、不動産会社への報酬として「仲介手数料」の支払いが発生します。
仲介手数料の相場は「売却価格」に3%を乗じた値ですので、もし5,000万円の土地を売却したとすれば、150万円程度が仲介手数料として発生することになります。
相続手続に際して専門家を利用するケースが多いです。
不動産相続であれば、相続登記を代行してもらうために司法書士を活用しますし、相続税や各種税金についての計算には税理士を活用することになります。相続人同士で争いが起こったときは弁護士に紛争解決を依頼することになるでしょう。
そしてこのときは各専門家への報酬が費用として発生します。
相続登記のみであれば司法書士への報酬として10万円前後が発生すると考えられます。相続税に関して税理士に依頼するときは、遺産の大きさに応じて変動するケースが多く、例えば「遺産総額の1%」などと定められることがあります。
料金体系は専門家によって異なりますので、仕事を任せる前に費用の大きさについて見積もりを出してもらいましょう。