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成年後見制度にかかる費用| 法定後見と任意後見それぞれの手数料や報酬

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法律上、判断能力があると評価されなければ、単独で有効に法律行為を行うことができません。また、判断能力が衰えていると、その弱みに付け込まれて詐欺被害などに遭うリスクが高まってしまいます。

 

こうした問題を解決する制度に「成年後見制度」があります。本人を支援・サポートする制度として有効ですが、制度を利用する際、費用が必要です。また、後見人となる方への報酬なども発生するケースがあります。
ここで、これら費用についてまとめて解説をしていきます。

 

成年後見制度の種類に応じて手続内容や費用は異なる

成年後見制度は、認知症や知的障害など、法的に判断能力が不十分と評価できる人の権利・財産を守るための制度です。

 

同制度により支援の対象となるのが「被後見人」、被後見人を支援する役割を担う人物を「後見人」などと呼んだりします。

 

成年後見制度には①法定後見制度と②任意後見制度の2種類があり、それぞれ利用ができる場面や手続内容などに違いがあります。
そして費用にも違いがあります。そこで以下では①と②に分けてそれぞれに必要な費用を紹介します。

 

法定後見制度にかかる費用

法定後見制度は、被後見人となる本人の判断能力が衰えてしまった、欠いてしまった、という場合に利用ができます。つまり、事後対応として利用を始めることになります。

 

医師に診断書を書いてもらったり、家庭裁判所で審理を受けたり、後見が開始されるまでには一定の手続が必要です。

 

また、裁判所への申立のために書類も準備しないといけませんので、その取得に対しても費用が発生します。

 

必須の費用

法定後見制度で必須となる費用は、以下の通りです。

 

費用の内容

金額

申立手数料

800円

後見登記手数料

2,600円

郵便切手代

5,000円程度

診断書作成料

数千円程度

戸籍や住民票等の発行費用

戸籍謄本は1通450円、住民票は1通300円

 

後見を開始するには、その旨登記をする必要があります。そのため後見登記手数料である2,600円は欠かすことができません。なお、申立人が直接登記手続を行う必要はなく、手数料を納めて申し立てれば後は裁判所の方で処理を進めてくれます。

 

状況に応じて発生する費用

前項に挙げた費用の他、裁判所から「鑑定」を求められたときは、10万円ほどの費用が加算されます。

 

申立のときに医師の診断書も提出するのですが、その診断結果が絶対的指標となるわけではありません。あくまで裁判所の判断を助ける一資料に過ぎず、裁判所自身が被後見人候補者の状態を調べたいと考えたときは、鑑定を求められることもあります。

 

必須の費用だけであれば1,2万円で足りるところ、鑑定まで必要となればかなり費用の負担が増すでしょう。

 

また、法定後見制度の手続を専門家に依頼するケースも多いです。
弁護士や司法書士などに状況を説明し、手続の代行を依頼。必要書類の取得から申立の準備まで、その他後見に係る広範なアドバイスが得られます。その一方で、プロを利用することになりますので、費用の発生は避けられません。
具体的な金額は依頼先により異なりますが、おおむね10~30万円ほどといわれています。

 

後見人等への報酬

法定後見が開始されると、後見人等は被後見人の法律行為の支援などを継続的に行うことになります。後見人等は自らの時間を割いてある種の仕事を行うことになりますので、後見人等に対する報酬も発生します。

 

成年後見制度では、親族の方などが後見人等になるとき、無報酬とすることもありますが、それ以外の方が選任されるときは報酬が発生するものと考えておきましょう。

 

通常、親族でない者が選任される場合、専門性や信頼性がある程度担保されている専門家が選ばれます。弁護士や司法書士、社会福祉士などです。

 

この場合、一般的には月あたり5万円前後の費用がかかります。
さらに、特別困難な事情がある仕事に関しては、「付加報酬」が発生し、月額報酬である「基本報酬額の50%以下」の範囲で費用が加算されることもあります。

 

さらに、「後見監督人」と呼ばれる人物を選任するケースもあります。
後見人等にすべてを任せるのが不安だ、という場合に後見監督人は選任します。後見人等をさらに監督する立場の人物がいれば、被後見人の家族なども安心して仕事を任せることができるでしょう。

 

ただし、当然ながら後見監督人に対しても報酬は発生します。
一般的には月あたり2,3万円程度がかかるといわれています。

 

任意後見制度にかかる費用

続いて任意後見制度の利用に必要な費用を紹介していきます。

 

任意後見制度は、本人の意思に従い、事前に後見開始を決めておく契約により始まる成年後見制度です。

 

法定後見制度は事後的な措置であったのに対し、こちらは事前対策として行われます。
本人が任意にその契約を締結するため“任意”後見制度と呼ばれます。

 

本人が後見人候補者と契約を締結しないといけないこと、公正証書として契約書を作成しないといけないこと、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されて初めてその契約の効力が生じること、などが法定後見制度と相違します。

 

またその違いに起因し、費用にも差が出てきます。

 

必須の費用

任意後見制度を始める下準備として、任意後見契約の締結および公正証書としての契約書作成が欠かせません。

 

その他各種手続を進めるのに手数料が必要ですし、登記関連の手数料も発生します。これら費用をまとめると次のようになります。

 

費用の内容

金額

公正証書の作成手数料

11,000円

※証書の枚数が、法務省令所定の計算方法に従い4枚を超えるとき、超えた枚数に応じて250円が加算される

法務局に納める印紙代

2,600円

法務局への登記嘱託料

1,400円

書留郵便料

約540円

正本謄本の作成手数料

1枚あたり250円

 

状況に応じて発生する費用

法定後見制度同様、手続を専門家に依頼するときは、別途費用がかかります。

 

契約書の作成が必要となるところ、その作成に慣れている方は少ないかと思われます。専門家に依頼すれば効率的に任意後見契約書の内容を定めることができ、公正証書作成の手続もスムーズに進められることでしょう。

 

依頼には、10~30万円ほどの費用が発生します。

 

後見人等への報酬

後見人となる人物が親族の場合、無報酬とすることもありますが、報酬を設定する場合は、月あたり1~3万円ほどで設定されることが多いです。

 

また、専門家になってもらうこともでき、その場合は月額5万円ほどになることが多いです。

 

さらに任意後見制度では後見監督人が必置です。
そもそも任意後見契約の効力を生じさせるには、後見監督人の選任が必要です。そのため後見監督人に対する報酬、月あたり1~3万円ほどがかかってきます。

 

費用が出せないときの対処法

成年後見制度を利用するには、費用の負担が避けられません。

 

本人の判断能力が不十分であることが明らかであったとしても、費用の支払いをすることなく後見を始めることはできません。申立てをしても裁判所から却下されてしまうでしょう。

 

このようなときは、市区町村等で運用している支援制度がないか、調べてみましょう。成年後見制度など、公的な制度の利用を支援するための事業が行われている可能性があります。「申し立ての費用は出せるが、月々の報酬の負担ができない」といった方などは、一度住まいの市区町村に問い合わせてみましょう。

 

専門家を利用する際の費用に不安があるという方は、法テラスにも問い合わせてみましょう。専門家に対する報酬の立替、無料相談などができる可能性があります。