玉川税理士事務所

玉川税理士事務所 > 記事一覧 > 不動産を相続した場合の相続税は?~相続税の計算方法について~

不動産を相続した場合の相続税は?~相続税の計算方法について~

記事一覧

不動産を相続により取得した方は、その建物や土地の評価額をもとに計算される「相続税」を納めないといけないケースがあります。そのため税負担も考慮して不動産を取得するため、評価額の計算方法を理解しておくことが大事です。
不動産を取得していない他の共同相続人についても、まったく無関係の話ではありません。単純に各人の取得分に応じて相続税が決まるわけではないからです。
ここで相続税の計算方法と、そのために必要になる不動産の評価額を計算する方法を解説していきますので、不動産を取得する方もそうでない方も参考にしていただければと思います。

 

相続税計算の概要

まずは相続税を計算するときの基本的な流れを簡単に示します。

 

遺産総額から課税遺産総額を算出する

被相続人(亡くなった方)の財産は、広く相続財産になるとともに、相続税の課税対象になります。
それら財産の価額を合計したものが「遺産総額」です。
不動産についても評価額を算定し、その額を遺産総額に含めることになります。

 

この遺産総額に税率を掛けるだけで相続税の額が定まるわけではありません。
そもそも遺産の中には非課税財産(墓地や仏壇など)も含まれますし、債務(借金など)も含まれています。これらについては遺産総額から差し引く必要があります。
逆に、相続開始前3年以内の贈与に関しては相続税の計算に含めるというルールがありますので、その分は加えて計算します。

 

さらに、遺産に係る基礎控除の適用も必要です。
基礎控除は常に適用される控除で、3,000万円を基準に、法定相続人1人あたり600万円を加算して算出されます。

 

例えば法定相続人が3人の場合、4,800万円を控除することになります。
こうして控除もした上で残った分が「課税遺産総額」となります。

 

税率の適用と個別の相続税の算出

算出された課税遺産総額を各人の法定相続分に応じて按分し、ここに税率を掛けます。

 

適用される税率は、「法定相続分に対応する取得金額」により定まります。
※“実際の取得分”と“法定相続分に対応する取得金額”の違いに注意

 

例えば法定相続分に応じて分けた場合、取得金額が1,000万円以下の者については「税率10%」。1,000万円を超えて3,000万円以下になる者については「税率15%+50万円の控除」が適用されます。このように、取得金額が大きくなるほど適用される税率と控除額は大きくなります。

 

さらに、税率を掛けて算出された額を合計して、「相続税の総額」を出します。

 

この相続税の総額を各人実際の取得割合で按分し、各々適用できる控除も適用することで、ようやく相続税が把握できます。

※ここでの按分は“法定相続分”ではなく“実際の取得分”に対応することに注意

 

遺産総額に加える不動産の「相続税評価額」について

計算過程からわかるように、共同相続人が自分の相続税だけを計算したいときでも、いったん相続財産全体の価額を把握する必要があります。

 

自分が取得していない財産であっても、その価額が自らの相続税の大きさに影響を与えることになります。「相続税の総額」を算出するまでは、共同相続人間で同じ計算過程を歩むからです。

 

そこで、不動産を取得するかどうかに関係なく、不動産の価額を把握する術を知っておくことが大事です。
土地や建物、状況に応じて利用する評価方法がありますので、これを示していきます。

 

路線価方式による土地の評価額

「路線価」がつけられている土地については「路線価方式」で評価額を計算します。
路線価は“道路に面する土地1㎡あたりの価額”のことで、国税局長が定め、その内容は国税庁のホームページから確認ができます。

https://www.rosenka.nta.go.jp/

 

路線価方式では次の計算式を使います。

 

土地の評価額 = 路線価×面積×奥行価格補正率

 

奥行価格補正率は、土地の形状などに応じて適用する補正率であり、例えば「間口が小さく狭い」「整形されていない」「今後の建築では建物を後退させないといけない」「日照不足や異臭の問題がある」といった場合に補正を行います。

 

倍率方式による土地の評価額

路線価がついていない土地については、「倍率方式」で評価します。

 

評価には次の計算式を使います。

 

評価額 = 固定資産税評価額×倍率

 

固定資産税評価額を基準に、地価事情により定まる倍率を掛けて、評価額が算出されます。
なお、固定資産税評価額については役所で固定資産税台帳を閲覧することで確認ができます。

※固定資産税評価額は3年ごとに改定されることに注意

 

倍率は路線価同様、国税庁のホームページから確認可能です。

 

固定資産税評価額による建物の評価額

次に建物の評価方法についてですが、こちらは固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。

 

ただし賃貸物件の場合、賃貸割合に応じて減額がなされます。賃貸されている分については所有者も自由に使えるわけではありませんので、その分を少なく評価する必要があるからです。

 

相続税評価額の減額ができる特例もある

以上が不動産の基本的な評価額の計算方法です。

 

ただし実際の相続では特例により評価額を下げられるケースもあります。

 

特に着目すべき特例が「小規模宅地等の特例」です。
所定の要件を満たす宅地に限り、一定面積まで最大80%もの減額をすることが認められます。非常に節税効果の大きな特例ですので、土地を取得したときは税理士に相談してこの特例の適用について検討してもらうようにしましょう。税理士に相談することで小規模宅地等の特例以外の特例や控除についてもアドバイスがもらえますし、相続税の計算や申告書の作成など、税に関わること全般を任せることもできます。