被相続人が亡くなったとき、その方が持っていたすべての財産は相続人へと承継されます。不動産のその例外ではありません。しかし不動産の場合は遺産分割をしないと共有状態になってしまい後々管理が大変になってしまいます。
また法改正により相続登記が義務となりましたので一定期間内に登記申請も行わないといけません。
遺産総額が大きいときは相続税の申告も欠かせません。
このような不動産相続の手続を当記事にまとめます。
相続人が複数いるときは遺産分割協議によって不動産等の財産の取得者を定めます。
しかしこの遺産分割協議より遺言書の方が優先されます。もし、遺言書が作成されているのなら、遺産分割の方法も制限されてしまうため、まずは遺言書を探し、これが見つかったときはその中身を確認しておかないといけません。
遺言書に「土地○○はXに与える」と具体的な指定がされていることもあれば、「相続割合は、Xが1/2、Yが1/3、Zが1/6」と取得割合で指定がされていることもあります。割合で指定されているときは、バランスを調整するため不動産の分割方法にも注意が必要です。
※相続人の全員の合意があれば、遺言内容に従わないことも可能。
相続人となる方を、戸籍情報から調査します。
亡くなった方の戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍をすべて収集し、相続人となる方を漏れなく調べていくのです。
並行して遺産の調査も進めます。被相続人が所有していた建物や土地を、漏れのないようにすべて把握していきます。
相続人の全員で遺産分割協議を行います。とはいえ必ずしも全員が同じ場所に集まる必要はありません。重要なのは“合意”です。話し合いの場にいなかったとしても後で合意が取れれば遺産分割は有効に成立します。
仮に分割対象が現金であれば難しい話し合いは不要です。法定相続分、あるいは遺言書で指定を受けた割合で分け合えば良いだけです。
しかしながら主な遺産が不動産である場合、分割の方法にも工夫が必要です。
次のように4つの選択肢がありますので、状況に応じて最適な選択を行いましょう。
その際は相続に詳しい専門家の意見も参考にすると良いでしょう。
不動産の相続方法 | |
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共有 | 複数人で一緒に所有する方法。 相続開始後そのまま放置していると共有状態となる。 相続割合に沿って取得することができるが、単独での処分ができなくなり、その後相続によってさらに共有関係が複雑化するなど、問題も多い。そのため基本的にはその他の方法を模索する。 |
現物分割 | 相続人の1人が取得する単純な方法。 手続もシンプルであるが、公平に遺産を分配するのが難しくなり、不動産を取得した方が生活資金を確保できなくなるおそれもある。 ※不動産を取得するのが配偶者であれば配偶者居住権の取得により住まいと生活資金の確保が可能。 |
代償分割 | 相続人の1人が取得し、その他の相続人に代償金(金銭)を支払う方法。 不動産しかめぼしい財産がないときでも公平な遺産の分配が可能。ただし不動産を取得する方に金銭を支払うだけの経済力が求められる。 例)相続人が2人、遺産は不動産(5,000万円)のみ。一方が不動産を取得し、他方に2,500万円の代償金を支払う。 |
換価分割 | 不動産を売却した代金を相続人で分け合う方法。 公平な遺産の分配が可能で、その後の不動産の管理なども必要なくなる。ただし売却できるまでに時間がかかり、期待していた額より少ない代金しか手に入らない可能性もある。 |
各財産の取得者が定まれば、名義変更の手続を行います。不動産の場合は登記申請により名義変更を行います(相続による取得の場合は特に「相続登記」と呼ぶ。)。
相続登記を行うことで権利関係を公示でき、所有権も守りやすくなります。
これまで任意で行うものとされていたのですが、2024年4月1日以降は改正法の適用により義務となっています。
しかも、この改正法によって2024年3月以前に相続で取得した不動産に関しても登記義務が課されましたので注意が必要です。
登記申請を行うには「申請書」の作成が必須です。
また、登記原因についての証明をするため、不動産を相続したことを示す「遺産分割協議書の写し」や「遺言書の写し」、「相続関係説明図」の準備が必要です。
他にも法定相続人の戸籍謄本や所有者となる方の住民票、被相続人の戸籍謄本等や住民票の除票も取得しておきましょう。
登記申請は登記所で行うこともできますしオンラインから行うことも可能です。一つひとつ相続人自身で調べて対処していくことも可能ですが、わからないこと・不安なことがある方は、司法書士に依頼しましょう。
相続登記は、所有権の取得が決まってから3年以内に行わないといけません。
義務を怠ると過料に課され、お金の支払いを命じられてしまいます。
もし、なかなか遺産分割が進まないときでも、「相続人申告登記」を行いましょう。
相続が開始されたことと自らが相続人であることを示すだけでいったんは義務を履行したことにできます。
※その後遺産分割が完了すると、そこから3年以内に相続登記が必要。
不動産の取得、名義変更の手続が完了したら、相続税の計算を行います。遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば相続税は非課税で、申告の必要もありません。
一方で基礎控除額に収まらないときは申告書の作成と添付書類を準備し、税務署に提出しないといけません。
この申告は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければいけません。相続税の納付期限も同日です。
相続税の計算は複雑ですので税理士に任せてください。申告書の作成や、それ以前に必要となる遺産の評価にも高い専門性を要します。相続登記と違い期限も早く迎えますし、ペナルティもより重く定められていますのでご注意ください。